【劇評】劇団モカイコZ公演 『維新怪奇譚 竜と怪物』

 

演劇のおもしろさの中には、この作品によってなにが言いたいのだろうか?

と言うことを想像したり、思い巡らせたりする時間があると思う。

ではこの作品「竜と怪物」はなにが言いたかったのだろうか?

 

劇団モカイコZは、春にピカデリーで初の松本公演を行った上田の劇団。

今回は二回目のピカデリー公演となる。

小劇場スタイルにピカデリーを作り替えるスタイル。

座席を従来よりも舞台前面に近づけ、席数を絞り、なおかつ照明のバトンを下げて見事にピカデリーの中に小劇場を作り出している。

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これはこのような小劇場舞台の公演にぴったりのサイズで、役者の迫力や息づかいがすぐそこに感じられて素晴らしい。

またセットも背景の襖戸が開いたり閉じたりして楽しい。

演出も、殺陣に模造刀を使わず、手刀を使ったり、衣装がジャージだったりと工夫やセンスを感じさせる。

役者もハキハキとした発声や舞台狭しと飛び回る動きはとても若々しい限りだ。

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幕末。土佐藩の秘所で死人の手足をツギハギして造られた怪物が脱走した。

その名を「竜馬」という。やがて彼は京都にたどり着き、お留なる子供相手の剣術道場主(?)の娘に助けられる。

しかしそこに新撰組がやってきて彼を不貞の輩として斬り付ける。もとは死人の彼は斬られても死なない。傷を縫い合わせるとまた蘇り、剣術の腕を磨く。

そしてお留のために強くなることを決意し、京都の町を徘徊。腕に覚えある侍を辻斬りしてはその右腕を自らの腕にしていく。しかし彼を目の敵にするのは新撰組だけではなく、やがて維新側の長州、薩摩藩にも拡がり、彼はついに追い詰められる。

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さて前述の「なにを言いたかったのだろうか?」ということだが、この作品においてはなんだったのだろうか?

人造人間と言えば、かの有名な「フランケンシュタイン」。

この名作では名前も無い怪物は、自分がなぜ生み出されなければならなかったのか?という根源的な問いを我々に突きつけてくる。見るからに醜く、ボロボロの継接ぎだらけの不細工な人造人間。

この作品の中で同じく醜い人造人間である「竜馬」にその問いかけは無い。

そもそもなんでこんな自分が造られたのか?という疑問が彼に無いから無理くり葛藤を造り出さなければならなくなる。

そこで新撰組が出てくるのだが、彼らは人造人間である彼を特定して攻撃対象としている訳では無く、そもそも粗暴であるという設定だからますます彼の生き様は不安定になる。

彼をして自分のアイデンティティーを保つ唯一がお留と言うことになり、彼女を命がけで守るために自分が生きているという事に落ち着く。

しかし剣術の腕が上がらないために、親友である以造を殺しその腕を自らの物としてしまう。最近のラノベでは、主人公は努力してはいけないのだそうだ。なぜならそこに多くの若者が同意できないからだという。

この主人公竜馬の解決法もいってみればお手軽だ。自らを鍛えるのではなく、他人の持っている物を奪って自らを強化する。そのため怪物と呼ばれるのだが、その怪物が最後に頼るのは拳銃。もっとお手軽になる。

演劇の中で、主人公に入れ込む、すなわち共感することが客にとってある種の快感なのだが、この怪物にはちっとも共感を得ない。それは己自身の最も大事な根源をそもそも失っているにも関わらず、そのことに一切触れず、外側に目を向けているからだろう。

このお話には、己とは何か?何を成すべく生み出されたのか?と言う段階が失われている。

その問いを通じて、我々自身がなぜこの世に生み出され、現世に何を求められているのか?と問うことになっていくのかと期待したが、残念な結果に終わった。

なぜ自分が作り出されなければならなかったのか?と言う、創造主への絶叫はついに聞かれなかった。

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もう一つがっかりしたのは、最後の殺陣のしつこさだ。切られても切られても死なない登場人物達。

そもそも手刀を見なしで使っているから迫力と言う点では欠ける。そこへきて延々と勝負のつかない殺陣をやられるとさすがに飽きてしまう。音響や光の合わせ技もよかっただけにこれまた残念。

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役者陣は頑張っているだけに、いろいろと残念な部分が見え隠れしてしまったが

実力がある劇団だけに次の公演はさらに成長してほしい。

 

 

(ピカデリーホール客席より)

撮影/安田貞喜

【作品名】劇団モカイコZ公演『維新怪奇譚 竜と怪物』

【上演日】2016年10月1日・2日 ピカデリーホール

【作・演出】篠原拓夢

【キャスト】早渡知利、奥堀まゆ、篠原拓夢、バイオ手塚、加藤亜紀歩、有賀慎之助、沓掛亜里紗

【上演時間】90分
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2 Comments

  1. モカイコzは、去年の夏もピカデリーホールで上演を行ったので、3回目の公演だとおもうのですが・・・?
    情報は正しく載せるべきだと思います。

    • ご指摘ありがとうございます。今年の1月のはプロデュース公演である「モカイコP」ですね。
      「モカイコZ」としては昨年8月に続き2回目だということで、モカイコZさんから直接お聞きしました。

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