【劇評】学生演劇集団ユニット サクラロジック旗揚げ公演『DREAMER ~地下に咲く群青色の夢~』

 

本ユニット、サクラロジックは現役高校生による演劇ユニットである。

しかも松本と上田と言う地理的に離れた高校生が集まって結成されている。

それだけでも驚きなのだが、さらに驚かされるのは、彼らのほとんどが高校3年生であるという。

同年代が今まさに進学や進路に大忙しの夏休みに、有料の公演を自分たちだけで打つということである。
本ユニットの主催者は高山拓海。

このところ幾つかの近隣社会人劇団公演に客演。

高校生にしてすでに常連役者となりつつある。

しかし彼は現役の高校生であり、在籍していた松本蟻ケ崎高校演劇部は、昨年度中信地区の大会優秀校として県大会へも進出している。

そんな高山が同じく県内優秀校の一つ上田染谷丘高校演劇部の薮田と出会い意気投合、立ち上げたユニットがこのサクラロジックである。

なんだかマンガや小説の題材にでもなりそうな展開であるが、事実は小説より奇なりで、「いつか一緒にやろうぜ!」がほんとになってしまった。

 

さて旗揚げ公演の本作「DREAMER ~地下に咲く群青色の夢~」は、彼ら二人に、さらに賛同した二人の女子高生、中村葉月と木下裕絵を加えた4人芝居。

スタッフも全て高校生と言うこれまたびっくりの編成だが、日本全国広しと言えども純粋に高校生だけで編成されている演劇ユニットの有料公演なんてあるのはここ松本だけなのではないだろうか?

 
話はいつとは知れぬ未来、地下に住む事を強制された人類は、RUNA(ルナ)なる鉱物をエネルギー源として地下帝国を築いていた。

RUNAの発掘と運搬は主に子供の仕事とされ、4人の登場人物たちもその苦役に従事していた。

しかしある日そのうちの一人ニルは誰のモノともわからない日記を拾う。

そこには地上世界のすばらしさが書かれていた。

やがて彼は何時の日か地上に出たいと夢想するようになる。

しかし地上に出ることは、帝国により厳しく規制されていた。

日記を読み進めるうちにニルは、地上が核汚染により住めなくなり、人類が地下へ逃げることになったことを知ってしまう。

さらにその核汚染の元はURAN(ウラン)であり、帝国はその事を知ってRUNA(ルナ)と変名し兵器への転用をはかっていた。

ついに彼らは地上を目指すのだが・・と言ったスジ建て。

そこに博士と助手による地上研究話が同時に進行し複雑な展開になっている。

 

正直に言うと、破綻寸前の物語で、出て来る様々な様相は子供じみて陳腐。

しかしよく考えてみると彼らは子供(高校生)だから、らしさが溢れているとでも言おうか。

日記で知る地上に憧れる主人公も、なぜ日記だけでそこまで地上に憧れるのか?ちょっと同意できないし、その他の友人たちもいきなり「じゃあ俺も行く、私も行く」となる行程が行き成りすぎてついていけない。

前提となる帝国の現実が「大人から子供への規制」と言い分けられているところが難しくしているところか?

場面の展開は、いかにも演劇好きが作ったと思われる演出や構成なのだが、複雑さを加えただけで、面白みやスピード感は今一つ。

4人しかいない役者を使って帝国政府の動きやら過去の研究者のお話やもろもろを説明しようと試みていたのだが、あまり効果的とは言えなかった。

特に最後のシーンは、夢破れた形で終演となってしまったが、それでいいんだろうか?

圧倒的な社会にはかなわないというメッセージに見えてちょっと残念だ。

 

主演の薮田は、エネルギッシュな演技で好感が持てるのだが、もっと異様な役が合うのではないだろうか?彼の面容はまっすぐな主人公と言うよりも複雑な性格を表し易いと思う。

逆に助演の高山の方が合っていたのではないだろうか?

女優陣も難しかった。中村は可憐な表情がいい。また木下は泣きの演技が極まっていた。

しかしどちらも押し付けがましい。

信濃ギャラリーと言う極近い距離で役者と客が相対する劇場では、ほんのちょっとした目の動きや口の動きですら伝わってしまう。ましてや感情の真実性は隠せない。

これはちょっとやそっとの練習では身に付かないものだから、ぜひ日常の練習で磨いてもらいたい。

 

しかしいろいろな難点を抜きにしてもこの公演は快挙である。

その若さと実行力に喝采を送りたい。

公演の成功は一回では成しえない。何回もチャレンジして少しづつ磨かれるものだ。

メンバーを変えてもこのユニットを続けて行くと言う風になっていけば、やがて物凄いモノができるかもしれない。

最後近く、まるで70年代の小劇場シーンのような4人による群唱が象徴していたように、彼らもまた夢に悩み、苦悩し、挑戦を始めた若者だ。

そんな若者を大切に育てていく文化をこの街はいつまで持って居られるだろうか?少し考えてしまった。

最後にこの公演にあたって一番苦労したであろう親御さんに言いたい。

「お疲れ様でした」と。

 

(ピカデリーホール客席より)

 

 

【作品名】学生演劇集団ユニット サクラロジック旗揚げ公演『DREAMER ~地下に咲く群青色の夢~』

【上演日】2016年8月7日・8日 信濃ギャラリー

【作・演出】高山拓海

【キャスト】薮田凛(上田染谷丘高校)、高山拓海(松本蟻ケ崎高校)、中村葉月(松本美須々ヶ丘高校)、木下裕絵(上田染谷丘高校)

【上演時間】90分

 

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