【劇評】演劇裁縫室ミシン 第18回公演『ドーナツと残像』

13334405_1023542454360314_1277209471_o
とある地方高校写真部のひと夏を、ホラー要素を交えて描いた演劇裁縫室ミシンの旗揚げ作品を12年ぶりの再演。

演劇裁縫室ミシンは、主に諏訪・岡谷地区の役者から構成されている劇団であって、純粋な意味でのご当地劇団とは言えないのだが、主催の岩崎のみが松本在住と言うことで、松本地区の小劇場劇団と言ってもよいと思う。
特徴はなんと言っても「大道具」にある。

彼らの作り込む「大道具」は大きな可動舞台やら、巨大な二階構造の建物やら、とにかく凝っていてそれだけで飽きさせない魅力がある。
松本周辺でこれだけの「大道具」を作り出せる団体は唯一と言ってもいいだろう。

13329916_1023542447693648_1673892096_n
しかし今回の作品は、そんな彼らからすると以外にシンプルだ。高校写真部の地下部室と言う設定で、コンクリートの打ちっぱなし壁面3面による室内だけ。いわゆるパネル建て舞台。
しかしやはり彼らなりのこだわりというか凝った造りが結構あってそれがまたストーリーに推進力を与えている。
半地下から地上への窓として機能する「換気扇」や役者紹介映像での壁面分割などがそれだ。

また小道具も面白い。

突然つきっぱなしになるTVだったり、暗室の扉が自動で閉じたり、開いたりする。

そんなところにも彼らなりのいわゆる「大道具」作りへのこだわりを感じる。

13313664_1023542444360315_667591054_o

ストーリーは、高校写真部の部員たちを巡る、いわゆる青春コメディーものなのだが、

主人公の一人、日向野が撮った「ヌード写真」とモデルになった女子部員たちを中心にして、地方都市における高校生たちの退屈な日常と持て余すエネルギーのぶつかりあいをコミカルに描いている・・・と思いきや、

実は炭鉱街と思われる地方都市の都市伝説的な殺人事件が絡まって、徐々にホラー色に染まっていく。

 

ストーリーの展開はテンポも速く軽快。

展開もわかり易く、コミカルな場面も多いので万人が楽しめる。

13342396_1023542441026982_286758786_n

役者は、再演と言っても当時の出演者は一人も出ていないし、ほとんどが外部からの客演となるのでプロデュース作にに近い感じである。

しかし高校生を演じるにあたっての無理は感じなかった。

それだけ若返ったということだろう。

13334797_1023542451026981_702073696_o

12年前の脚本だけに当時の世相と言うか雰囲気を伝える手触りがある。

12年で世相は大きく変化した。今どき退屈で困る高校生はあまりいないだろう。

当時はまだスマホなんてないし、ましてやSNSなんて無かった。

 

また今どきの高校生は意外と忙しいらしい。

もちろん進学やら就職活動もそうだが、バイトに精を出している学生も多いと聞く。

のんびりとした高校生活というものも見当たらなくなっているのかも知れない。

 
今回の演出は代表の岩崎だが、演技そのものは大久保が指導しているという。

その指導は、大げさでも演技を際立たせるということらしい。

ピカデリーの舞台を通常の客席位置から見ると小劇場というよりも中劇場ないしは大劇場クラスの距離感がある。

 
それを考慮しての演出ということだろう。

わかり易くコミカルな動きは舞台に活力を与えていた。

さらに多くの客演陣を同じ舞台上で違和感なく統一した演技をさせるのはなかなかに難しいが、かなり成功していたのではないだろうか?

実力派劇団の次回作は、ぜひ新作を期待したい。

 

 

(ピカデリーホール客席より)

 

 

【作品名】演劇裁縫室ミシン 第18回公演『ドーナツと残像』

【上演日】2016年5月28・29日

【作・演出】 岩崎佳弘

【演技指導】 大久保学

【キャスト】 米山亘、 滝澤秀宜、 高山智世(劇団山脈)、 原菜々美(劇団山脈)、 宮田紫央(劇団音光舞)、 早出隼人(劇団音光舞)、 山田愛菜(客演)、 有賀慎之助(客演劇団ゲキブツ)

【上演時間】 1時間30分

 

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です