【劇評】劇団たぬき王国第五回公演 『リレイヤーⅢ』

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劇団たぬき王国は、三井淳志と曽根原史乃、本沢誠が中心となって、2012年7月に旗揚げ。

今回で5回目の本公演となる。

 

しかしながら三井、曽根原らは、そもそもまつもと演劇祭の最初期からの活動歴を持つ最古参の面々だ。

それだけに毎回の芝居もそれなりの仕上がりが期待されてしまうが今回はどうだったのだろうか?

 
結論から言うと、本公演は、最初から一貫して何とも言えない違和感に覆われた作品だった気がする。

主催の三井は、パンフレットの中でも触れている通り、既成台本を使う公演が多い。

理由は好きだからと記載されている。

 

既成の現代脚本を公演する劇団については様々な考え方があると思う。

もちろんいい悪いは無いのだが、なぜその脚本を今、この時に選んだのか?が気になるところだ。

 

やはり現代既成脚本には、その時代でこそ成立した理由があるわけであり、それが現在でも通用するとは限らない。

また、特定の劇団の公演を目的に書かれた場合、役は特定の役者を当てて書かれることもある。

そうなるとその役とは到底受け入れがたい役者が当てられる事も有り得る。

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本作品は初演1983年、改訂版が1985年、このⅢも1986年とかなり古い。

今はすでに解散してしまった劇団が舞台。

 

劇団を復活させようと、別れてしまった劇団員たちに声を掛け、その集合を待っている男女二人の劇団員が演じる「劇団を崩壊させてしまった芝居の芝居」。

こうやって書くとなんだかわからなくなるが、まさにその通りで現在と過去と劇中劇が次々と入れ替わり、どれがどの瞬間なのか?よくわからなくなる。

 

たぶんにしてそれは作者の狙いなんだろう。

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劇団たぬき王国は、現在主要メンバーが、三井、曽根原、本沢の三名である。

今回は5名の役者を外部から招いている。

 
本作がどうにも不思議な違和感を持っていたのは、実はこのせいなのではないか?

 

この作品は、長年に渡り「ひとつの劇団」を盛り上げようとしてきた者たちの濃密なコミュニケーションの話である。

つまり濃密な関係を持った者たちが作り上げる「崩壊までのストーリー」なのであって、その前提が失われてしまうと、この話自体が唯のお芝居になってしまう。

 

控え目に言っても今回の出演者たちにそこまでの濃密さが見受けられなかった。

もっと言うと、これはそもそも長年に渡り苦楽を共にした「一つの劇団」が行うから意味を見出せる作品なんだろうと思う。

キャストの半分が招致した役者で構成された公演だとそれは成り立ちづらいのだろう。

 

もしかしたら、主催の三井の中には、そう言った濃密な関係だった劇団を羨ましいと思う感覚があったのかも知れない。

あるいは今はもう遠くなってしまったあの頃を懐かしむ感覚か?

 
全く前に進まない終わりを見せるこの作品に、なにを投影していたかは、客席からはわからなかった。

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主役を演じたサトルは、残念ながら、ホールの反響に飲み込まれてセリフの半分ちかくが聞き取れなかった。

なかなかに若々しい、切れのある演技を見せていたのにおしかった。

 

劇団の作演出である真鮒を演じた松井貴信は、これが長編の初出演だそうだ。

新人とは思えない落ち着きで、今後が期待できる役者が現れたと感じた。

 

こういう役者が次々と出てくるのが松本の実力だと思う。

 

劇団のヒロイン大海樹木を演じた小池美重は、この作品で一番の輝きを見せたと思う。

芝居と友情と愛情の狭間で揺れる彼女こそ、この作品の要であった。

 

そんな中で若手新人を演じた曽根原史乃はパッとしなかった。

もともと地力があるのだからそんなに力を入れなくてもいいのではないだろうか?

この女優は、自分の劇団ではなぜか妙に型にはまった演技になりがちのように感じる。

 

本沢誠のオタ披露タイムはなんだか恒例になりつつあるのだろうか?ほっとする瞬間だった。

 

主催の三井は、突然の役者降板という事態をなんなく乗り切ってさすがの統率力をみせた。

 

 

(ピカデリーホール客席より)

 

 

 

 

【作品名】劇団たぬき王国第五回公演『リレイヤーⅢ』

【上演日】2016年4月9・10日

【作】 鴻上尚史

【演出】 三井淳志

【キャスト】 松井貴信、三井淳志、サトル、小池美重(アートひかり)、曽根原史乃、高山拓海、本沢誠、たみ、北澤幸理(当日降板)

【上演時間】 約2時間

 

1件のコメント

  1. 客席からの劇評との事ですが。文責を考えるとお名前を出した方がよろしいかと思います。

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