【劇評】劇団骨格公演 『週刊、カミソリを殴る』

劇団骨格とは、信州大学劇団山脈の中のプロデュース劇団だ。

作演出の田中もとが中心となって同世代の役者を集めたユニット名。

田中もとはこれ以外にも、独立したユニット公演を行ったり、脚本の提供を行ったりしている。

学内に留まりがちなサークル活動を飛び出して、活発に活動している面白い存在だ。

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大地震と津波の被害を受けた架空の街、星ヶ浜。

発電所の被害によって汚染された街に住み続ける事を押し通した母親達三人のそれぞれの子供は「奇跡の子」と呼ばれ称えられることになる。

やがてその三人の子供たちは成長し、毎週水曜日に街角で演説する「電波おじさん」と言われる男との交流によって、街の真実と自分たちに科せられた名前に疑問を抱いていく。

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そして高校生になった頃「奇跡の子」はついに主人公ただ1人だけになってしまう。

「孤独」「なりゆきの恋愛」「大人への不信」が彼を取巻く。

そしてついにリストカットの衝動と共に弱弱しく生きている自分を世間に晒す事によって生への希望を見出そうと街角に立つ。

心細い自分やすれちがう世間や去りゆく友を振り返りながら、あの時の「電波おじさん」のように・・・。
今作では、東日本大震災と福島原発事故をモチーフとしながら、若者が感じる、将来への不安や大人への嫌悪などが割とありがちな過程で描かれる。

ありがちと言うのは、ここに出て来る登場人物達の造形も、その行動も意外性は無いからだ。

あるとすれば「電波おじさん」の存在だが、おかしな所業と言うよりも、やむにやまれぬ衝動からの行動であり、特別な変人と言うわけではない。

また「奇跡の子」と言う名をいただいた主人公たちも、至ってありがちな成長を遂げる。

しかし主人公には、仲間に起こる「いじめ」やら「理不尽な離別」やらがやけに重々しく感じられる。tekkotsu_02

誰しも、幼い時に思う「特別感」からの目覚めは、大人への第一歩なんだろう。

自分は「特別」でもなんでもない、「普通」の人なんだ。

それはきっと作者の感じた現実の感覚なんだと思う。

大学の枠を飛び出して社会に揉まれていく「特別ではない自分」に対する思いは、出演者たちそれぞれが抱く想いとシンクロしているのかも知れない。

役者は、6名。入れ替わり何役もこなす。

年齢も小学生から大人まで様々。

こう言った作品にありがちな誰が誰だかわからなくなるということはない。

しかしながらところどころで役不足感が漂う。小劇場ならではの客との距離に、役者が圧倒されている感じが見受けられた。

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主人公を演じた齊藤大河は自然な立ち振る舞いに好感が持てる。

奇跡の子の一人、権三郎を演じた笠井智は、いろいろな役を多彩に演じ分けていた。

信大山脈の後輩たちも、このような先輩たちに刺激されて、面白いチャレンジを続けて欲しい。

 

 

 

 

 

(信濃ギャラリー客席より)

 

 

【作品名】週刊、カミソリを殴る

【劇団名】劇団骨格

【上演日】2016年3月5・6日

【作・演出】 田中もと

【キャスト】 伊藤江美、笠井智、川井高志、齊藤大河、高田ひかり、高山智世、御門実

【上演時間】 約2時間

 

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