【劇評】「ウタ子さんのゴンドラ」 モカイコP

 

モカイコPは上田市在住の劇団「モカイコZ」のプロデュース公演名。

そのため今回は外部から4名の客演を得て、松本と長野のツアー公演を企画。松本公演が初回となる。

 

若さに満ちたバイタリティーある役者陣と明るく軽快な(ちょっと古風)な作風の劇団だ。

今回は、ピカデリーのステージだけを使用した小劇場スタイル。

客席は真ん中の演技スペースを挟んで両サイドから役者を観る。

舞台には、簡易椅子が数個あるだけの基本素舞台だ。

主人公の心情や物語の背景、状況などを他のキャストが本を片手に物語る「ト書きリーディング」なる手法。

本来、リーディングとは俳優が本を片手に読み、語る形式が一般的と思うが、今作ではリーディングしながらキャスト達も動きまわる。

 

主人公は、大正時代を生きたエレベーターガール「ウタ子さん」。

彼女は人生に怠惰でときめきを知らない。楽して生きたいがため、彼女は「恋」をして伴侶を得ようと決めた。

彼女の人生に絡む男性たちは、架空の(限りなく実在の人物に近い)作家たち。

そんな彼女の恋と人生の顛末を「ゴンドラの唄」に乗せて語る。

今作は「大正時代」の設定であるが、今風の言葉遣いで気軽な雰囲気。

また登場する人物も実在の有名作家を彷彿とさせるがあくまでも空想上の人物。それぞれ思い浮かぶ作家の名前と行動をにおわせて面白い。

 

ウタ子さんを演じた「奥堀まゆ」はモカイコZの団員であるが、実に多彩な表情を作り出す素敵な女優だ。

奔放な性格と後半の深刻な表情の違いはハッとさせられた。

他の登場人物は、入れ替わり立ち代わり他の出演者が次々演じていくのだが、軽快な演出でわかり易い。

大正時代に舞台を設定した理由は、最後の最後にわかるのだが、これも現代に通じる出来事が関連して思い起こされる仕掛けだ。

 

ただ、リーディングにする理由があまり感じられなかった。

つまりギリシャ劇のコロスのように本を手にせずに語りをすればいいと思う。

あれだけいろいろと動き回るのではあれば本は逆に邪魔のように感じる。

作家たちが出て来るから本を・・ということだったのだろうか?

 

長野公演を控えているので、物語の詳細は触れないでおくが、ウタ子さんが最後に「ときめき」の真実を知ることになるのだが、皮肉が効いていて、とてもいい。

しかしウタ子さんの反応がなぜか湿っぽいのが気にかかる。ここはカラッと終わって欲しかった気がする。

これは好みの問題だろう。

 

上田の劇団がこうして松本に来て、地元の劇団員を客演に迎えて公演を行うことにとても意義を感じる。

長野県の演劇事情に変化が確実に訪れている。

 

(ピカデリーホール客席より)

【作品名】ウタ子さんのゴンドラ

【劇団名】モカイコP (モカイコZプロデュース)

【上演日】2016年1月30・31日

【企画・原案】 伊藤茶色

【作・演出】 篠原拓夢

【キャスト】 大久保 学(演劇裁縫室ミシン)・有賀慎之助(客演劇団ゲキブツ)・加藤亜紀歩・両角眞太朗・奥堀まゆ・バイオ手塚・早渡知利・フランキー山本

【上演時間】 1時間30分

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